Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

国道20号線

http://www.route20movie.com/


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映画「国道20号線」を観て、「なんて退屈な暮らしだ」「頭の悪いヤツらだ」と思ってしまうのは、俺がエゴイストでない証拠だ。もしそこから踏み込んで「この不幸な暮らしを撲滅するために何をすべきか」なんて考えるとしたら、極めてエゴイスティックだが、それがなければ世界は「悪く」なる一方なのではないか。自分の意見を相手に押し付けることが「逃げない」ことなのでは・・・。但し、権力構造に充分に配慮しなければならないけれど。

国道20号線」は現代日本においてファンタジーにならない。旧来的コミュニティの崩壊による「小さな物語」の多極展開のひとつの結果だと言えるが、ほかの極との流動性をこの映画から全く感じられなかったのはなぜだろうか。極が異なるのだから、別の物語からの圧力や影響が弱くなるのは当然で、むしろ原因は、別の物語を生きる者のエゴイズムの欠落ではないかと思った。そしてエゴイズムの欠落を助長しているのは、「話し方(discourse)」(あるいは「振る舞い(behavior)」と言い換えてもよい)の絶望的な差異かもしれない。主人公の言ってることが理解できなかった。