Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

つっこみ力とは何か もしくは なぜメディアリテラシーは敗れ去るのか

愛と勇気とお笑い、これがつっこみ力を構成する三大要素です。どれもが、社会と人生をおもしろくするために欠かせない要素です。つっこみ力の目的は、社会と人生をおもしろくすることにあるのです。正しさをおもしろさに変えるのが、つっこみ力の目的です。

これに対して、メディアリテラシーの要素は、論理と批判です。私はずっと疑問に思ってたのですが、メディアリテラシーも論理力も批判力も、その目指すところがわからないのです。正しさから出発して、正しさを証明して、それからいったいどこへ向かうのでしょう。それどころか、正しさから出発してうろうろしてたら、やっぱり元の正しさに帰ってた、なんてことすらあって、これではなんのおもしろみも逸脱も発展もない堂々めぐりです。結果的に、社会や人間を正しさの奴隷にするばかりで、つまらないものにしてしまいます。

パオロ・マッツァリーノ「つっこみ力」p.99)



受験秀才が学者になって社会学とか経済学をやると、川の流れこそが大切で、一滴一滴の水滴はどうでもいいみたいな、マクロ社会理論や社会システム論信仰に走りがちなところがあるんです。私は、どうしてもそこについていけません。ときとして社会科学に人間性が感じられないことがあるのは、人間を信じていない学者が多いからです。(中略)でも、個々の人間同士の関わりでしか解決できないことって、たくさんあるんですよ。

パオロ・マッツァリーノ「つっこみ力」p.174)