Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

ウェブは資本主義を超える

ウェブは資本主義を超える

ウェブは資本主義を超える


本質的な意味でWeb2.0と呼びうるのは、ウェブ全体がXMLで書かれるようになったときだろう。(p.24)

情報処理がウェブ上で自動化され、効率が高まる一方で、権利処理はきわめて非効率で、コンテンツ流通の最大のボトルネックになっている。この問題を解決したものが、次のマイクロソフトになるだろう。これは技術的にもビジネス的にもきわめて困難で、しかも小さな企業が採用しても意味がないという点で、グーグル/ユーチューブにふさわしい課題だ。(p.29)

ネット上の反抗には理念も組織もないことだ。つまり、若者の異議申し立ての方法が該当の暴力からネット上の言論に変わり、その対象が政府よりもメディアになっているのではないか。(p.44)

ウェブの未成熟な時期に、2ちゃんねるが表現の幅を広げたことは評価してもいいが、匿名ブログが数百万になった今日では、その役割は終わった。アクセスも、ピーク時の半分に落ちている。今必要なのは、格差社会への不満をこんなところで晴らすことではなく、日本社会を変える建設的な方法を考えることだろう。(p.44)

過渡的な間違いは許容することだ。それがインターネットのベスト・エフォートの思想である。日本の企業が情報産業で失敗するのは、この点を理解していないからだ。(中略)一つの間違いも許さないという製造業のカルチャーがいつまでも抜けない。(p.45)

情報セキュリティは、その費用対効果の評価が最もゆがんでいる分野だ。コンピュータ・ウィルスで死んだ人はいないし、インターネット経由でクレジットカードの番号が盗まれた事故はほとんどないのに、他の分野よりもはるかに高いセキュリティが要求される。それはこの分野が珍しく、「最先端」だからである。(p.188)リスクを完璧に防止しようとすると、非常に高いコストがかかる。それよりも、問題が起きたら事後的に検出して対応する方がコストが安い。たとえば絶対に破られない金庫を作ることは困難だが、破るのに30分以上かかり、その間に守衛が来るようにしておくことは容易だ。(p.216)

情報産業では供給側の設備のよりも需要や技術革新の不確実性が問題になるのである。こういう場合には、あらかじめ特定の目標を設定して大規模な投資を行うよりも、多くの「実験」に分散投資し、事後的に見直して失敗したプロジェクトから撤退するオプションを広げることが重要になる。(中略)官民のコンセンサスで運営する方式では、悪いプロジェクトを採用するリスクを減らすことはできるが、情報産業で重要なのは、よいプロジェクトを採用しないリスクを減らすことである。(p.205,206)

バラマキ政治を可能にしたのは世界市場で闘う「強者」の上げる利益だった。弱者は高度成長に寄生し、政治家はそれに寄生していたのだ。(p.223)