Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

トーテム song for home

D

台湾原住民出身のバンドTOTEMとそのvocalスミンを追いかけた音楽ドキュメンタリー映画。


寄り添うようにいつもそこに音楽があるなら、その音楽こそ、僕を支え、癒し、ときに試し、素直にさせてくれるものだ。突き抜ける眼差しのような前衛音楽を芸術として評価することは否定しない。しかしそうでない、喜びや悲しみを時間を経て語り継ぐための音楽や、田舎の住宅の文字通り「ラウンジ」でプレイされるような音楽も、また美しい。

スミンの音楽性は、民族音楽にルーツを置いているが、ポップスの影響もかなり強い。このような折衷が支持されるのは、日本の音楽シーンを見ても納得できる。この映画をつくった若木監督の話を聞けば、伝統文化の活用と保護、原住民への差別、田舎志向、いろいろな問題を考えることもできる映画だ。けれどそれより僕にとっては、日常と祭り、科学技術と文化芸術が自然に混ざり合っている凡庸さというか複雑さが、共感と忌避の源であり、歯痒さも安らぎも増幅させる。