Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

ハート・ロッカー

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本年度米国アカデミー賞最優秀作品賞!キャスリン・ビグロー監督も、女性として最優秀監督賞を史上初受賞。賞レースは、マスコミによって元夫ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」との対決が騒ぎ立てられていたけど、両方観たなら軍配はおのずとわかる。

イラク戦争における爆発物処理班の兵士たちを描くドキュメンタリー・フィクション。よくある戦争アクション映画のようにバカみたいに銃を振り回す人物は登場しない。ドンパチも、現代の戦争に必要な最小限。現代の戦争って?簡単に言えば、対テロ戦争だが、断片的にあるいはイメージ未確立の状態で報道されるその戦争はどんなものか?敵がどこにいるかわからない。一般人と区別がつかない。誤爆?自分の命の危険を最小化するために、それは正当化されるかもしれない。不信?良心?高揚?焦燥?文字通り手に汗握り、息を呑む展開。任務にあたる彼らの不安や恐怖、あるいは狂気に、思いっきり見入ってしまう。

戦争がイヤだとか、非人道的だとか、そういう意見とは論点がずれてしまうので注意したい。反戦とか非戦とか、そういう「戦争」を扱うドキュメンタリーとは根本的に違う。これは「戦争」をきっかけにして何か別のものを描く。戦争がリアリティを持っている状況を徹底的な観察眼と統制力で描ききった、「映画」だ。