Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

おおきく振りかぶって

おおきく振りかぶって(15) (アフタヌーンKC)

おおきく振りかぶって(15) (アフタヌーンKC)




ひぐちアサ高校野球コミック。大学の先輩にっしーに薦められて買い始めた。

極度にオドオドしてるが抜群のコントロールを持つピッチャーと、それを最大限に活かして配球を組み立てるクレバーなキャッチャーを中心に、1年生だけの新設チームが懸命に頑張る姿を描く、余りに青臭くて読んでるだけで恥ずかしくて悶えるほどの青春マンガ。

マンガにはマンガの文法みたいなものがあって、大概はアニメ化してもスピード感がなくなったり、要素の多重化で人物のインパクトが薄れたりして原作以上の表現作品にならないことが多いけど、アニメ「おおきく振りかぶって」に関しては、さらにオモシロくなってる。なぜかといえば、このマンガのある特殊性と関係していると思う。それは、「心の声」(マンガでは雲の形のふきだしで表されるセリフ)。登場人物の「心の声」がセリフに占める割合が大きくて、対戦相手との駆け引きに重点を置いた展開がおもしろさの一つ。同時に、例えば理想のプレイができない自分に対する焦りや苦悩、チーム内の人間関係、尊敬、嫉妬なんかも、気持ちをしっかり描く。

これがアニメになると、それらの「心の声」が音声になることによって、まず、キャラクターの個性が明確になる。さらに、声に出さない「心の声」と声に出す「セリフ」のトーンに差をつけることで、思いの全てを言い切らずにお互いの行動を尊重するような人間関係や、逆に気持ちを巧く言葉にできないことがすれ違いを生んでいく様子、それぞれのキャラクターの価値観の違いがチームとしての総体に組み込まれる過程を、絶妙に描くことに成功している。