Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

顧客はサービスを買っている


著者は、自動改札機やATMなどオムロン製品の保守サービスを手掛けるオムロンフィールドエンジニアリング社において、かつて事業改革を指揮し、その経験を機に、サービスや顧客満足コンサルティングを行っている方。本書では、世の中のあらゆるサービスを分類・分解・モデル化して、それぞれの特性・要素・骨格を見える化させる分析について、解説されています。そして、サービス業はお客様の「事前期待」を把握することがサービスの原点だとして、サービス品質の向上のために「事前期待」をいかにマネジメントするか、その方法論と、いくつかの取り組み事例が紹介されています。


サービス業は、日本のGDPの70%を生み出しているそうです。にもかかわらず、サービス業のビジネスプロセスを論理的に著した書籍って少ない・・・。与信管理も、会計も、債権回収も、能力開発も、製造業の事例がほとんど。しかし、「サービスサイエンス」という名称で、その研究分野は静かに産声を上げていました。現時点では、サービス分析のための分類・分解・モデル化といった手法が整備されたばかりで、これをサービス改善に活かしていく取り組みは、これからという状況のようです。

例えば、「サービスは出荷検査できないから、均一な品質を保つことが難しい」という著者の指摘から、出荷検査に代わるサービス品質検査の方法を考えてみたり、「お客様を個別の要求に応じてセグメント化し、サービス内容を決める」という著者の主張から、「窓口担当と商品担当に分かれるSIerの営業のように、お客様の要求に応じて営業組織をセグメント化するという方法はないのか?」などと考えてみたりするための分析手法がまとめられています。人材紹介サービスにおいて、サービス品質向上のためにスタッフが犠牲にする、時間担保的な、気の遠くなるようなサービス接点の生産性を向上させるためのヒントも、見つかるかもしれません。