Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

リンク格差社会 ウェブ新時代の勝ち組と負け組の条件


2007年発行となると、内容が古いのは否定できません。しかし3年前の書籍にしては、現在のソーシャルネットワーク勃興へと繋がるウェブの進化の方向性を、かなりの程度言い当てているように感じます。特に、オンラインコミュニティを分析してその動的な性質を強調する部分には納得。


かつてブログの登場で、情報の受発信におけるマスメディアと個人の関係のフラット化が騒がれましたが、期待されたほどではありませんでした。それに対し、インターネットの可能性として著者が期待した、「メッセージやコンテンツの生成プロセスに多くの人々がかかわり合い、多用な思惑を統一することなく抱え込んだままで、一つのイベントとして臨場感を共有」するという状態は、2010年の現在、twittermixi、モバゲー、ニコ動などでまさに実現されているものです。著者の言葉を借りれば、SNSで私がおもしろいと感じるのは、ネットワークの中に無数のショートカットが存在することによって、「ネットワーク内の構成員どうしの平均距離が短縮」され、馴染みのない情報源へのアクセスコストが低下し、「弱い紐帯の強み」(マーク・グラノヴェッター,1973)が強調されることです。


本書はビジネスマン向けで読みやすい内容。ウェブに関する分析だけではなく、ネットワーク論の初心者向け。