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tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

ナンシー関の記憶スケッチアカデミー

ナンシー関の記憶スケッチアカデミー (角川文庫)

ナンシー関の記憶スケッチアカデミー (角川文庫)

消しゴム版画家・コラムニストのナンシー関さんのこと、存命中は知りませんでした。ヤワラちゃんは選挙に出る、と1995年に予言した慧眼で、今年話題になった方です。本書は、株式会社カタログハウスが発行する「通販生活」で、1995年から連載されていたコーナー「記憶スケッチ展覧会」を、単行本化・文庫化したもの。

「記憶スケッチ」とは、提示されたお題を記憶のみに頼って描くこと。「カエル」「パンダ」「鉄腕アトム」「ランドセル」など、お題は一見簡単に描けそうなものばかり。ところが全国から寄せられた大量のサンプルが、「人間の記憶」のあやふやさを暴き出してしまう。でもよく考えてみてください。「カマキリ」とか「ひょっとこ」とか、何も見ずに描けますか…?抱腹絶倒の「症例」の数々。それに対するナンシーの天才的な批評。ナンシー関の最高傑作。

これだけ読み進めるのが苦しかった本はありません。文字通りお腹を抱えて体ごと転げそうになるのです。僕は普段、通勤電車の中でしか本を読まないのですが、この本はダメでした。周りの乗客から奇異の目で見られました。ぶすっ、ぶすぅ、と何度も吹き出し、涙が出てきました。さらにナンシーさんのコメントがことごとく押してはいけないツボを押すのです。コラムニストとしての才能に、夭逝を惜しむ声が溢れる事にも納得です。Amazonマーケットプライスで叩き売りされているので、ぜひお試しあれ。