アーキテクチャの生態系―情報環境はいかに設計されてきたか/濱野智史
- 作者: 濱野智史
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2008/10/27
- メディア: 単行本
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かなり前に買って積読状態だった本。社内の書評メールマガジンに寄稿するテーマとして「Web/インターネット」を半年前に選んだとき、実はこの本のレビューを書くことを想定していたのですが、なかなか手が伸びず、その最終回で遂に、というかようやく紹介することができました!
ミクシィ、2ちゃんねる、ニコニコ動画、ケータイ小説、初音ミク……。日本のウェブサービスは固有の形に進化している。他の国にはない不思議なサービスの数々は、なぜ日本独自の進化を遂げたのか。本書は日本独自の〈情報環境〉を分析し、日本のウェブ社会をすっきりと見渡していく。ゼロ年代を代表する最注目の若手論客による、日本の〈情報環境〉を検証する決定的一冊。
本書が執筆されたのは2008年。まだFacebookではなくmyspaceが世界最大のSNSであり、Twitterはユーザー数急増の直前、SecondLifeがビジネス誌などで注目されていた時期にあたります。但し本書の視座は、ネット上で注目されたサービスの設計の構造(アーキテクチャ)を分析し、日本社会論を交錯させつつ、その多様なあり方に関する知見を得ることにあります。
「アーキテクチャ」という概念は、情報社会論(僕の大学時代の研究領域でもあります)の論壇意外でこの意味で用いられることがほとんど無いので、一般の人にはややとっつきにくいかもしれませんが、そんなに難しくはありません。本書の主張を僕なりに解釈すれば、情報環境を整備・管理することで情報行動や態度、ひいては社会のあり方が規定され、またその逆も起こり、情報環境も社会も生態系のように再設計されていく、という事です。
特に興味深いのは、2ちゃんねるのサービス設計を分析した第3章、オープン化戦略に踏み切る前のmixiについて分析した第4章、Winnyの(倫理的な問題を抜きにして)優れたアーキテクチャを分析した第5章でしょう。また、「Twitterの何が面白いの?」という方には、Twitterとニコニコ動画とSecondLifeを、コミュニケーションの「同期」という観点で比較した第6章は、大いに参考になるはずです。