Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

八日目の蝉

D


カメラワークが丁寧でいい。井上真央の初登場シーン(布団にうつぶせ)とか、強いこだわりが感じられる。カットの切り換えも自然なタイミングで、母の生きる過去と娘の生きる現在を行ったりきたりする脚本なのに、違和感がない。上映時間が長いのもその裏返し、カットひとつひとつが大事にされているためでしょう。

永作博美が異常にかわいい。今回は「人のセックスを笑うな」で見せた女としてのかわいさではなく、母としてのかわいさ。他のレビューでは「母の強さ」などと書かれてるけど、それでは彼女の演技の要点を抑えられていない。この作品はむしろ、強いからではなく弱いからこそ必至に娘を守ろうとする、ひたむきな母親の示す言葉や表情や振る舞いが感動を誘う。観たことない感じだ。

未成年者略取の逃亡犯と、4歳まで誘拐犯に育てられた学生。主演の二役はとても特殊な境遇なのに、自分でも引くぐらい感情移入して揺さぶられた。一本で3回泣ける。結論、今年公開の邦画では暫定1位。