Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

『CHANGE』は政治ドラマの難しさを再認識させる

朝倉総理は一つの問題に明らかに時間をかけすぎている。日本の政治には喫緊の懸案が無数にあることに彼は気づいていない。一人の陳情者の愚痴を延々聞いたり、一人の病人の見舞いに出かけたり、そんなことを一国の総理がやり始めたらどうなるか。(中略)リアリティーを捨象した単純な世界で、いくら理想主義を唱えても、鼻白むばかりだ。視聴者が心を動かされるのは、理想主義者が強大な現実に打ちのめされながらも、それでも立ち上がろうとする真摯な姿に対して、である。朝倉総理は打ちのめされ方が足りない。(中略)政治の世界は、少しのリアリティーを出すことさえ困難を極めるからだ。医師や弁護士がどんな生活をしているのか、私たちにもなんとなくだが想像できる。しかし政治家の日常生活がどんなものか、私たちには見当もつかない。

キネマ旬報2008年8月上旬号p.160 時評・石飛徳樹)