Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

フィッシュストーリー

D

伊坂幸太郎原作の映画化。音楽プロデュースは斉藤和義が担当。

「もし僕の孤独が魚だったら・・・」


エンディングまで観終えてようやく、これが荒唐無稽な寓話だと認識できるんだけど、そんな荒唐無稽な寓話でもすてきでしょ?というメッセージが、夢を追いかける人への優しいエールにさえなっている。やがて収束するであろう伏線どうしの接点を、画面上においてはギリギリまでうまく隠しつつ、そこに次々と登場人物のエゴを魅力的に被せてくる脚本は、批判的な見方を忘れさせてくれる。だから、楽しい映画になっているのだ。


自分の思いが誰かにちゃんと伝わるのか、自分の行動が未来の世界に影響を与えられるのか、それがたとえ無理だと思ったとしても、表現することを諦めなければ、報われる可能性はゼロではないということに、希望を持ってもいいのかな。

この映画が感動をくれるとしたら、登場人物に対する賞賛ではなく、観た者が何かを見出したことへの歓喜によるものだ。