Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

ローマ環状線、めぐりゆく人生たち(原題: SACRO GRA)

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ヴェネツィアでドキュメンタリーとして初の金獅子賞を奪取した話題作。公開3日目の平日朝1本目に行ったらチケットが取れず、翌日リベンジ。やはり満席でした。

カメラは、社会的な生き物としての人間の暮らし、勃興と没落の有機性をとても愛おしく映し出す。ヤシの木に巣食う害虫が都市のメタファーであったとしても、だからこそ都市の魅力が際立ってくる。都市の郊外をテーマにした数多くの芸術作品の中でも、ここまで詩的な美しさを備えたものはなかろう。強いて言えば登場人物のアクの強さが「サイタマノラッパー」と共通するところがあるかもしれない(笑)けど、予定調和でないというノンフィクションの強みを最大限に活かし、現実をひたすら切り取って愛おしい一編の詩に仕上げるという手法自体からも、この映画が見せようとするテーマ(見えない美)が伝わってくる。