Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

「学歴ロンダリング」「錬金術」

東大の修士課程の定員は1990年代初めと現在を比べると、約2倍に増えている。他大学でも法科大学院ロースクール)や経営大学院(ビジネススクール)などが雨後の筍のように新設され、学生獲得に躍起になっている状況だ。(問題は)学生と教員の資質にあると見られる。研究計画書と面接だけで合否が決まる社会人大学院もある。実際、基礎学力が低いために、講義中の「ストラテジー」程度の英語がわからないたとか、レポートが書けず他の学生にアルバイトで代筆してもらう、といった話が聞こえてくる。一方、文献を読んで論文を書くことだけに長けた教員は山のようにいるが、企業で働いたことがあるなど「実践」経験のある教員は少ないため、大学側はベンチャー企業で財務や企画をやっていた人材を教員として採用するケースが目立ち始めた。論文の数ではなく経験を買う「実務型教員」と呼ばれる。そうした教員が、学生の求めるままに「錬金術」を教える構図になっている。今や一部の大学院、特に修士課程では、大学院教育が本来行うべきである、課題の本質などを追求するための思考方法ではなく、いかに金儲けの「ハウツー」を教えられるかの場に変わっている。そうしないと、大学院は設置したものの、学生が来ないで閑古鳥が鳴く状況に追い込まれるのだ。

(「WEDGE」2008年7月号p.82-84 一部要約)