Rays and Waves

tdswordsworksによる映画・音楽・アート・書籍などのレビューや鑑賞記録。

パリ20区、僕たちのクラス

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監督独自の撮影方法で、事前情報が無ければドキュメンタリーだと思わせるようなリアリティを、造り上げてみせた。ローラン・カンテ監督の他の作品を観たくなる。まず、出演者は、映画の舞台となるパリ20区の中学校で学ぶ、演技経験のない生徒と教師たち。シーンのすべてを知らせず、知らせるのは自分たちのセリフとそのきっかけだけ。世界観は出演者自身の中にあり、だからこそ彼らの反応(一瞬の表情、戸惑う仕草、哀しみの空気が、リアリティとなってフィルムに収められるのだ。

気づけば、貧しい移民の子が多く通う公立学校の問題、という先入観を通り越して、信念に突き動かされて行動する、飾り気も粘り気も無い子どもたちの、それは決して反抗でも悪意でもなく、理想と現実の狭間でもがく様子と、何らかのきっかけで未来を掴める可能性を、今そこにある悦びと危機と認識させられた。すごくいい映画だ。そうそう、パルムドール受賞作。8月6日(金)まで、神保町の岩波ホールで上映。